恋待花~オレンジ色~
♪恋待花:オレンジ色のストーリーの彼は、
ちょっと福山雅治似の素敵な彼でした。♪
♪ ♪ ♪ Vol.1 ♪ ♪ ♪
『こんにちわ』
『どうもー』
いつしかこんな挨拶で始まった、さとちゃんとの出会い。
仲良しの友と楽しそうに肩を並べ、会社の廊下で出会う昼下がり。
オレンジ色の靴下が目に眩い。
『彼と恋、知り合いだったの?』
『んー。何となく最近挨拶するようになったのよ』
友人の春は、不思議そうに話す。
考えてみると、さとちゃんとは何の接点もない。
職場も違うし。年だって違う。
唯一接点と言えば、
さとちゃんの彼女と少しだけ話をするくらいの間柄である。
それもその彼女ときたら、とても美人さん。
年上の私でさえ、話しをする時に緊張するくらいだ。
私はと言えば…。
元気で明るいイメージの、ごくごく普通なタイプ。
一応、彼氏持ち。
清々しい朝。
忙しい一日のスタートだ。
『おはようございます。会議資料をお願いします。』
書類を抱え各エリアに次々と配布する。
『捺印をお願いします』
『はい。宜しくね』
入社5年目。仕事は卒なくこなし、職場での人間関係も順調である。
『いつも元気ですね』
忙しく歩き回っているそんな時、横の方から聞き覚えのある声。
『あれっ。さとくん?』
『そうですよ。おはようございます』
『職場、ここだったの?いつも通っているのにわからなかった』
『あははは。恋さんはいつも走っているからね。
オレは知っていましたよ。だっていつも通る時間が同じでしょ。
今日は思い切って声を掛けてみました』
にこにこと人なつこく笑って話すさとちゃん。
こんな表情で話をされたら、ちょと胸がくすぐったい。
『じゃあ、またね』
『はいっ。廊下で会いましょう。』
・・・オレは知っていましたよ。
だっていつも通る時間が同じでしょ。・・・
『これって、何?何でドキドキするの…』
恋待花の蕾が…。
♪ ♪ ♪ Vol.2 ♪ ♪ ♪
・・・オレは知っていましたよ。
だっていつも通る時間が同じでしょ。・・・
帰りの廊下で、さとちゃんのこの言葉が胸に響いていた。
今付き合っている彼氏とは、最近倦怠期気味。
付き合って2年になるけれど、焼きもちが酷く会えば必ずケンカをする。
『年下だから仕方がないよ』と春は言うけれど、そんな事はあまり関係ない。
年下といっても、たった1つしか変わらないし、
3月生まれの私と11月生まれの彼氏では、
たいした差を感じないのである。
となりの芝生は青く見えるとは良く言ったもので、まさに今そんな感じの私なのだ。
『こんにちは』
『どうもー。元気そうね。』
『お陰さまで』
いつもの他愛無い挨拶。
でもあの朝以来、心なしか少しだけさとちゃんに近づいた感じがしている。
『あー。恋さん…』
『何…。』
『何でもない。またね』
最近、さとちゃんからこんな風に声を掛けられる事が多くなった。
相変わらず、オレンジ色の靴下が眩しい。
『恋。話しておきたい事があるのよ』春が突然話し掛けて来た。
『何?もしかしてとうとう…』
春と春の彼氏とはとても仲良しさん。
近々ゴールインするのでは…との噂をよく耳にする。
『そうじゃなくて』
『じゃぁー何?』
『さとくんの事だけれど、彼女いるの知っているよね』
『知っているよ。でも何で…』
春はなかなか話し出さない。
『どうかしたの…?』
春の顔を覗き込むと、一点を睨むように見つめている。
『さとくん彼女に、今気になる人がいる。とても大切に思っているって言ったらしいよ』
『それと私と関係あるの?』
『どうやらそれは、恋の事らしいよ』
『えっ!』
複雑な心境。
でも胸の中の恋待花は、もうひらき始めている。(…つづく)
♪ ♪ ♪ Vol.3 ♪ ♪ ♪